独居高齢者認知症予防のためのコミュニケーション環境デザイン ーロボットとの対話を中心とした笑顔コミュニケーションー

藤野佐藤研究室 寺嶋郁子

近年,日本は高齢化に伴い独居高齢者及び認知症患者が増加傾向にあります.独居高齢者は家族や友人との交流が少なくなり1人でいる時間が多くなる場合が多いと言われています. 友人・知人とのコミュニケーションを取る機会が少ないと,認知症や老人性うつ病になることが多く,無気力・無表情になりやすくなってしまいます.
一方,笑いは認知症予防に有効だと考えられています.そのため,コミュニケーション不足により減少した笑いを補うことが認知症対策の一つとして重要だと考えます. さらに,近年AIやロボット技術の発達によりスマートスピーカーやSotaなどの家庭用ロボットの普及が浸透しており,このような最新機器の普及は, 介護施設での人手不足の解消や独居高齢者宅でのロボットコミュニケーションによる孤独感の低減などへ有効だと報告されています.
そこで本研究は,高齢者の健康促進や認知症予防を目的として,独居高齢者がロボットと笑顔を伴ったコミュニケーションをとることが可能な環境を提案します.

ロボットとの対話を中心とした笑顔コミュニケーションにより,独居高齢者に対する認知症予防の環境を構築します.
Uniboには,笑顔度計測・ランダム割り当て・笑顔度表示・笑顔誘発モードという4つの機能を具備しました.1つ目は笑顔度の計測機能です. Uniboを使ってもらう際に表情を記録し,笑顔度が不足していないか判定します.2つ目は,ランダム割り当て機能です.1日の間に,クイズや体操などの機能をランダムに割り当てます.
3つ目が,笑顔度表示機能です.笑顔度を利用者に伝えるため,Uniboのディスプレイに笑顔度を表示します. 4つ目が,笑顔誘発モードです.笑顔度が目標値以下の場合は,笑顔誘発モードに進み,ダジャレや小話で笑いを誘発します. 評価実験では,平常時の笑顔度と,ランダム割り当て機能使用後に算出する笑顔度,笑顔誘発モード使用後に提出する笑顔度を比較し,笑顔度の向上可能性を測りました. その結果,ロボットとのコミュニケーションにより会話が生まれ,笑顔も多く見られました. また,笑顔誘発モードに進んだ人は笑顔度が上昇し,笑顔誘発モードの有効性も示されました.
結論として,提案するコミュニケーションデザインにより,会話や笑顔の誘発が可能であるということがわかりました.

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