I-R分析を用いた旋律の分析と楽曲難易度の定量化

平田研究室 長谷川沙織

楽器の演奏練習に役立つシステムを構築したいと考えたことがきっかけで、この研究を始めることに至りました。 最近では、Spotifyなどといった音楽配信サービスが盛んで、そこでは膨大なデータベースの中から音楽の推薦が行われており、知らない曲に出会うことがあります。 このようなシステムを、練習曲探しに使えるようにすることで新しい音楽体験を作りたいと考えました。 同じ演奏熟練度の奏者が練習している、同じ程度の難易度の楽譜や音楽を新しい練習に用いることができるような、演奏練習のための楽曲を推薦を行うシステムを実現させる前段階として、本研究を始めました。

本研究の目的は、楽曲難易度の定量化、および有用な楽曲の特徴抽出を行うことです。
まず、演奏難易度のための特徴量の特定と定量化を行いました。音価・音高・フレーズの頻出度に着目し、音価・音高に関する特徴量は既存の定量化、フレーズの頻出度はI-R分析を用いた独自の定量化を行いました。 「音価の大きさ」「リズムの複雑さ」「音高変化数」「音域」「フレーズの頻出度」という5つの特徴量を設定し、それぞれ定量化のための式を考案しました。 I-R分析とは、暗意実現モデルという旋律をシンボル列に変換し分析する音楽理論モデルを用いて、旋律の構造情報を抽象化する分析です。
次に、目的変数を主観的難易度評価、説明変数を5つの特徴量として重回帰分析をすることで、特徴量と難易度の相関分析と難易度推定を行いました。
最後に、作成した難易度推定モデルの評価を行うために、評価実験の結果との比較を行いました。 この実験で、ヴァイオリン曲10曲分の楽譜から4小節抜き取って提示されている旋律について、主観で難易度順に並び替える質問について被験者に回答してもらうことで、主観的難易度評価を得ています。 その主観的難易度評価と難易度推定の結果を比べた結果、音高・音価と本研究で提案した新しい特徴量(I-R分析を用いて定量化したフレーズの頻出度)の5つを用いた場合のほうが、 従来の音高・音価に関する特徴量4つを用いた場合よりも高い推定精度であることが分かりました。

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