カール・ブロスフェルト作品におけるオノマトペを用いた鑑賞方法の提案

安井研究室 原田和呼

カール・ブロスフェルトはドイツの植物学者、教師であり新即物主義の先駆者である。彼の作品は、植物をクローズアップした緻密な視線で撮影を行った写真が多い。 多くの鑑賞者から、これらは普段気づくことのない、植物の魅力的な形態を余すところなく伝えていると言われている。また、具体的な写真であるが、抽象的にもみえ冷徹な幾何学的な印象を受ける。 私は、緻密であり抽象的なカ―ル・ブロスフェルトの作品をより深く鑑賞することができるオノマトペを用いた鑑賞方法を提案する。
似たような研究を2015年に大塚、諏訪らが行なっている。それは、創作オノマトペで日本酒の味わいを表現するというものである。 日本酒の味わいを言語化する専門家は、共有されている味わい方の表現方法のルールやパターン化に当てはめて言語化する。しかし、味わいの語彙は本当に汎用化できるのかと問題提起した。 与えられた共通言語で作られた汎用辞書ではなく個人の体感辞書の作成を行い、2名の味わい言語の境界が存在することを可視化した。このように自身の感覚をオノマトペで表現し他者と差別化することができていることがわかる。

まず、プロトタイプ1として

①カール・ブロスフェルト作品を鑑賞&作品に対する創作オノマトペ作成
②他の鑑賞者と創作オノマトペをディスカッションしながら共有
③もう一度創作オノマトペを作成

のプロセスを踏む作品に対する創作オノマトペを作成する鑑賞方法を提案した。
学生4組に実施した。作品から感じたことを創作オノマトペを作るため今までとは違った鑑賞ができており、作品を食べてみたり裂いてみたりなど創作オノマトペを作成するために新しい視点で鑑賞が行えていた。
しかし、創作オノマトペを作成するということ自体が難しく大変そうにしている鑑賞者も多くいた。そのため、私自身で創作オノマトペの練習を行なった。
その中で、鑑賞している作品を模写し、その絵に対して細部にオノマトペを書き込みを行なっていた。これは、創作オノマトペを作成するためのアイディアを作品の細部から得られていることがわかる。
この体験からプロトタイプ2では

①作品を印刷したものに直接オノマトペを書き込む(5分)
②交換して相手が書いたオノマトペに対して気づいたことを別紙に記述(5分)
③違う作品でもう一度オノマトペを書き込む(5分)
④振り返り

というプロセスにした。
このプロタイプ2では、作品自体に書き込みを行うことで、作品の一部に対応するオノマトペが多く、細部の鑑賞を行えていた。
また、オノマトペの書き込みの他に、イラストを描いたり、()で説明をつけるなどをして、自身の感覚を補足し詳しく表現している鑑賞者も多くいた。

カールブロスフェルトの作品は、細かい描写が多く今までの植物とは違う一面を表現している。そのため、今回提案したプロトタイプ2の鑑賞方法は彼の作品の繊細な描写を鑑賞することができ、適していることがわかった。

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