幾何図形から構成されるイラスト描画を支援するための動的補助線生成システムの設計と実装

竹川研究室 北森茂生

近年SNSでのイラストを使用したコミュニケーションが多く普及している。またイラストの投稿サイトの一つであるpixivでも登録ユーザが増加している。 またデジタルイラストの普及により趣味として書きたいと考えるユーザは増加傾向にあります。しかし独学で練習する場合には上級者による適切な指導がない環境では効率的に上達することは難しいです。 代表的な描画の練習法として模写やデッサンがあります。手本やモチーフをもとに描画する練習方法である。教則本では複雑な手本やモチーフを簡単な図形の組み合わせとして描画することで全体のバランスを整える方法がある。 しかし、初心者は複数の図形のバランスを正確に知覚し、手本通りに描画することは難しいです。また描画中や描画後すぐに自身のミスに気付くことは難しく、指導者や他の人に指摘してもらうことや描画後から時間を置く必要があります。 そこで本研究では描画中にシステムから補助線を提示することで初心者のイラスト練習を支援します。
本研究ではイラストにおける相互関係の理解に着目します。イラストにおける相互関係は大きさや位置の比率や角度とします。 イラストの描画を行う場合、下書きやアタリなどの工程で事前に単純な形状や図形に置き換えることや単純なパーツに分割することで描画を容易にする手法や他にも構造線やパース線を描画する手法があります。 これらのイラストの描画を補助する線を事前に描画することでイラストにおける相互関係の知覚を容易にし、複雑な形状やバランスのイラストの描画を可能とします。 システムではモチーフと描画しているイラストに対しパーツごとにシステムから動的な補助線の提示を行うことでイラストにおける相互関係の観察や修正を促します。

本研究ではシステムを用いてイラストの描画練習を支援し、最終的に描画者がシステムで支援していないイラストの描画においてもバランスのとれた描画できることを念頭に置き、イラストの相互関係を意識しながら描画するための支援システムをめざした。 そこでイラストの相互関係の知覚を容易にすることができる補助線や図形を描画中のイラストに対して提示することで観察と修正を促します。これにより描画者が気づけないような間違いやパーツごとの相互関係に注意を向けることができます。 提案システムでは、主に課題イラストを表示する表示画面と課題イラストを描画する描画画面の2画面で構成する.課題イラストは複数のパーツで構成されており、それぞれのパーツごとにレイヤー分けされています。 描画する際は、課題イラストのパーツと対応したレイヤーに描画し、動的補助線は描画されたレイヤーに対してそれぞれリアルタイムで提示される。また課題イラストにも同様の補助線が提示されます。 現在は、大きさを比較するための外形線と位置を比較するための中心線が提示されている。
本研究では、提案する動的補助線の提示機能の有効性を検証するために,12名の大学生または大学院生に課題イラストを描画してもらい、提案システムを用いて動的補助線ありで練習した場合の6名、動的補助線を使用なしで練習した場合の6名の合計12名について練習前後の描画イラストの上達度を比較した。
結果としては練習したイラストについては練習時に提案システム使用した場合と使用しない場合に大きな効果は見られなかったが、練習していない別の課題イラストについては提案システムを使用し、類似のイラストを練習することで提案システムを使用しない場合よりも上達していることが示唆されました。

研究一覧に戻る